会社の代表者としては、会社が破産に追い込まれてしまうことは痛恨の極みといえます。
破産を進めるにあたって特に気がかりなこととしては破産の手続きが終了した後、会社と代表者自身がどうなってしまうのか?
ということではないでしょうか。
破産手続きが終了した後、代表者自身がどのような立ち位置に置かれるのか?
ということについてみていくことにしましょう。
目次
会社の破産手続きによる効果は?
会社の破産手続きが行われることにより、財産は破産管財人が管理することになりますが、それに伴って債権者は債権の回収ができなくなります。
また、会社を解散すると、債務が残っていたとしても、その債務については返済する必要がありません。
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財産の管理処分が破産管財人に移行
会社の破産手続きを行うことによる効果としてあげられることは、財産の管理や処分の権限が破産管財人に移行することです。
これにより、会社の代表者は会社の財産を自分自身で管理したり、あるいは処分したりすることができなくなります。
12 この法律において「破産管財人」とは、破産手続において破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利を有する者をいう。
14 この法律において「破産財団」とは、破産者の財産又は相続財産若しくは信託財産であって、破産手続において破産管財人にその管理及び処分をする権利が専属するものをいう。参照:e-gov「破産法」
ただし、管理される財産はあくまでも会社の財産であるため、原則として代表者個人の生活に影響が生じることはありません。
ただし、代表者が会社の連帯保証をしている場合は、自己破産の手続きをしなければなりませんが、この内容については後述します。
債権回収が行われなくなる
また、財産の管理・処分の権限が破産管財人に移行することにより、代表者に対しては債権者からの回収が行われなくなります。
会社の経営者として多方面に債務を抱えていた場合、債務の返済に追われることになります。
しかし、会社の財産を破産管財人が管理していれば、代表者の元には会社の財産が一切ない状態となります。
その為、債権者は代表者に対して債権を回収することができなくなるのです。
居住移転が制限され、郵便物は破産管財人に転送
そのほか、会社の破産手続きを行うことにより、居住移転の制限を受けるほか郵便物が破産管財人に転送されることになります。
破産手続き中に居住制限を受ける理由としては、代表者が破産中に逃亡することを防ぐ意味があるほかにも別の居住先に財産を隠すことを防ぐためです。
ただし、代表者が居住地を移転したい場合は、裁判所に申し立てを行い、裁判所から許可が得られれば居住地を移動することができます。
万が一、裁判所から居住移転の許可が得られなかったとしても、裁判所の判断に不服を申し立てる「即時抗告」を行うことができます。
また、郵便物が破産管財人の元に転送される理由としては、代表者が申し出た債権者以外に別の債権者がいないかどうか?
そして、隠し財産を持っていないかどうかをチェックする意味合いがあるためです。
会社が解散し、残った債務は免除となる
会社の破産手続きを行うことにより、最終的に得られる効果は会社を解散することです。
会社の解散とは、会社を消滅させることを指します。
単に消滅させるだけでは会社に資産や負債が残ってしまいます。
そのため、残った資産は売却して現金化し、その現金を元手として可能な限り負債の返済を行います。
この一連の業務が「清算」となります。
関連: 会社の清算を決断!残余財産の分配はどのような方法で行う?
また、会社が解散となった時点で会社は消滅しますが、それに伴って、これまで抱えていた債務を返済する必要もなくなります。
会社の経営が思わしくなく、破産の状況に追い込まれたときは生きた心地がしないものですが、
一つ一つ破産の手続きを進めていき、無事に破産の手続きが終了することができれば会社の経営から解放されて肩の荷が下りるのではないでしょうか。
このこともまた、会社の破産を進めたことによる効果といえるでしょう。
会社の破産で代表者はどうなる?
会社が破産した場合、代表者がどのような状態に置かれるかが気になるところですが、会社の連帯保証をしているかどうかで、流れが大きく変わることになります。
代表者が連帯保証をしていれば、債務の整理が必要
会社が破産した場合、代表者が会社の連帯保証をしていない場合は、個人の資産にまで影響が及ぶことがありません。
会社を経営しているのは一個人であるものの、会社と個人はあくまでも別々の存在であるため、会社が破産しても個人の資産は守られます。
しかし、多くの場合は代表者が会社の連帯保証をしていることから、個人の資産も処分されることになります。
関連:会社の借金を肩代わり?中小企業の社長の「個人保証」を回避する方法を解説。
連帯保証をしている会社が破産した場合、代表者は会社が破産した分の債務を請求されることになります。
多くの場合、会社の債務は多額であるために個人の資産のみで返済することは困難といえます。
そのため、債務整理を選ぶ形となりますが、債務整理には「個人破産」、「個人再生」、「任意整理」の3種類があります。
このうち、任意整理は原則として利息制限法より高い利息で借金をしていた場合に、利息制限法の金利を超えていた分を減額するものであり、
法定利率で借り入れしていた場合は減額の対象外となります。
そのため、任意整理を選ぶと債務の額がほぼ変わらない状態となり、債務の返済が困難となるため、
ここでは任意整理は除き、個人破産と個人再生の2種類についてみていくことにします。
個人破産
個人破産とは個人が自己破産することを指すものです。自己破産の流れは会社が破産するときと同様となります。
個人が自己破産する場合は、現金や預貯金、自動車や不動産などの資産を破産管財人が管理し、換金できる資産を現金化して債務の返済にあてます。
そのため、自己破産した場合は原則として自動車や自宅は手放す必要があります。
ただし、破産者が今後生活していくことを踏まえて、99万円以下の現金や20万円以下の預貯金、家財道具などは処分の対象とはなりません。
現金化した資産を債権者に返済しても、全ての債務を返済できるわけではありませんが、返済できなかった債務については返済の義務がなくなります。
なお、自己破産すると5~10年間は借り入れができなくなるほか、免責が決定するまでは警備員や士業など、一部の職業に就くことが制限されます。
個人再生
個人再生とは、債務を減額するために裁判所に申し立てをすることです。
債務の額が少ない場合は全額を返済する必要がありますが、債務の額が多ければ最大で10分の1に減額されます。
なお、個人再生も個人破産と同様、借り入れを5~10年間行うことができなくなります。
個人再生を利用する場合、債務の返済期間は原則3年間、最長で5年間となることから、将来的に定期的な収入が見込めることが条件となります。
そのほかの条件としては、債務の総額が5000万円以下であることです。
以下に、借金額と最低弁済額の関係を示します。
- 借金額100万円未満:借金の全額を弁済
- 借金額100万円以上500万円未満:最低弁済額 100万円
- 借金額500万円以上1500万円未満:最低弁済額 借金額の5分の1
- 借金額1500万円以上3000万円未満:最低弁済額 300万円
- 借金額3000万円以上5000万円未満:最低弁済額 借金額の10分の1
例えば、債務の総額が100万円である場合は、債務が減額されないために100万円を返済しなければなりません。
そのため、個人再生を利用するよりも債権者と直接的に話し合いをして解決できる任意整理の方が効果が高いといえます。
また、債務総額が3000万円である場合は、返済しなければならない額は300万円に抑えられるため、個人再生の利用が適しているといえるでしょう。
破産が完全に終了した後に行うべきことは?
破産手続きが完全に終了した後に行うべきことは、「収入の確保」と「住宅の確保」です。
収入を確保するためには再就職することが効率的といえますが、就職するよりも自分自身で事業を運営していくことの方が向いている人もいることでしょう。
破産した後も事業を立ち上げることは可能ではありますが、破産した場合は金融機関からの借り入れができない状態となるため、
いかに初期投資を抑えながら事業を立ち上げるか、という点がポイントとなります。
また、破産した場合は、原則として住宅も処分することになるため、賃貸住宅を借りることが一般的です。
まとめ
破産といえばマイナスイメージが強いですが、破産の手続きを進めていくことによって、債権者からの回収がストップされること、さらに、会社を解散すれば債務の返済が免除されます。
日々、債務の返済や資金繰りに悩まされていた立場としては、気持ちが楽になることでしょう。
なお、破産が全て終了した後は、生活を立て直すことが先決となります。収入と住宅を確保して、新たな人生のスタートを切りましょう。