事業承継をした後の従業員の待遇は?労働契約・条件についてわかりやすく解説。

事業承継をした後の従業員の待遇は?労働契約・条件についてわかりやすく解説。

事業承継の基礎知識

事業承継をした後の従業員の待遇は?労働契約・条件についてわかりやすく解説。

事業承継の際に考慮すべき点として、会社側にとって重要とされる大きく3つの要素があります。

それは、「資産」、「知的財産」、「経営(人)」。

 

経営者にとって事業承継後の経営、すなわち人材(従業員)をいかに扱うかというのは、

経費の部分で大きな割合を占める人件費の圧縮の面でも、組織運営の面でも重要課題です。

 

そして、従業員にとっては

「元いた組織が変わった後に、業務内容が変わってしまうのか」

 

そしてそれに伴い

「待遇が変わってしまうのか」

 

というところはかなり気になる部分であることは言うまでもありません。

 

事業承継前に雇用されていた従業員に対し、事業承継後はどのような労働内容や待遇が施されるべきなのでしょうか。

この記事では、雇用側及び被雇用側双方に重要な、事業承継をした後の従業員の待遇についてお伝えします。

 

事業承継後の従業員との労働契約について

まず、事業承継の待遇について考える前に、事業承継の定義について改めて確認しましょう。

ここでは、企業組織再編の手法のひとつである会社分割において、承継会社への事業分割が行われた場合を事業承継としたいと思います。

その場合の従業員の待遇について、厚生労働省が定める「労働契約承継法」*1に沿って説明していきます。

 

「労働契約承継法」とは、労働者を保護するために作られた法律で、労働契約の承継が行われる際、発生しうる特例に対応するために制定されました。

まず、事業承継により、雇用側と従業員との間で事業承継前の会社であらかじめ締結されていた労働契約が、事業承継後も承継されるのかどうかというポイントについて考えていきましょう。

承継法第4条・第5条によると、これは承継前に従業員が関わっていた業務と会社分割契約書等の中で定められている内容によって変わるようです。

分かりやすく例を用いて整理すると、下の図のようなマトリックスになります。

 

労働契約の承継のガイドライン

参照:厚生労働省

 

上の図では、事業承継前は製造部門と小売部門を経営していたP社が、小売部門を分割してQ社に承継させるという例を参考に方向性が分れてきます。

①会社分割前に組織に属していた従業員が承継する業務に主として従事しているか

②分割契約書等、組織の再編成の際に交わされた契約書に業務を承継させる旨があるか否か

 

上記の2点がポイントとなってきます。

 

承継後の会社へ分割される業務へどのくらい関わっていたかという度合いと、

あらかじめ交わしていた契約書に盛り込まれた内容が重要となってくるんですね。

 

分割前の会社・被承継側の会社・従業員の三者間でしっかりとした共通認識の共有が大変必要だということがお分りいただけるかと思います。

これにはしっかりとした協議の上、できれば法律の専門家によるアドバイスの下、契約書を作成し妥当な内容で進めていきたいですね。

 

労働契約が承継された場合の待遇について

労働契約の承継の有無は判断できましたが、契約内容に含まれる従業員の労働条件はどのように変わるのでしょうか。

気になる待遇も含め、見ていきましょう。

 

平成12年に労働省が発表した、「分割会社及び承継会社等が講ずべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関する措置の適切な実施を図るための指針」に沿いながら説明したいと思います。

同指針の中に盛り込まれた「基本原則」だけでも、多岐にわたる内容が言及されています。

まず、指針の中で定められている、維持されるべき労働条件をざっくりとまとめると、以下の内容になります。

 

・労働契約は承継会社(事業承継を行う会社)に承継されるため、その内容に含まれている労働条件もそのまま維持される。

・労働協約・就業規則のほか、承継前の会社と従業員との間で暗黙の了解とされていた労働慣行も引き継がれる。

・年次有給休暇の日数・退職金額などの算定方法・永年勤続表彰の資格などにおいて換算される勤続年数は、承継前の会社のものを引き継ぐ事ができる。

・福利厚生は基本的には引き継がれなければならないが、もしこれが事業承継後の会社において困難な場合は前もって従業員に情報提供が行われなければならない。また、それと同時に代替策を従業員と協議し、妥当な解決を試みなければならない。

 

労働契約において、主として関わっていた業務を従業員として今までと変わらず行うという義務を全うすると同時に、

労働者として守られるべき権利が従業員にはあるということですね。

 

待遇の不利益変更について

待遇を含む、労働条件の不利益な変更は、事業承継の際に許されるものなのでしょうか。

その答えは「NO(ノー)」と言えます。

労働組合法及び労働契約法において、労働契約に含まれる労働条件の変更を行うときは、労使間、つまり会社と従業員との間で合意が必要。

そしてこれは事業承継が行われた際にも、会社側が一方的に不利益な変更を行ってはならないとされています。

 

会社分割による事業承継の際の解雇について

事業承継によって、会社と従業員との間で締結された雇用契約を白紙に戻し、従業員を辞めさせる事ができるのでしょうか。

この答えに対しても、「NO」と言う事ができるでしょう。

 

労働契約法第16条の規定により、会社分割のみを理由とする普通解雇や整理解雇が行われてはならないことになっています。

普通解雇とは、客観的合理性・社会的相当性のある場合の解雇のこと。

そして、整理解雇とは、事業がたちいかなくなった場合に従業員の人員を削減すること、いわゆるリストラです。

 

事業承継の際に債務があり、従業員を解雇したい場合は?

事業計画の破綻や不景気により、事業承継の際にはすでに損益がマイナスになっている、

そして債務が残存している厳しい状態の中、組織編成のタイミングで従業員の待遇を減らすばかりか解雇したい場合もあるかもしれません。

この場合も、利益を上げられない、または債務を履行できない事業に対して、従業員を雇用し続ける義務が事業承継後の会社にあるのでしょうか?

 

経営者の視点から見ると仕方がないことのように思えますが、会社の制度を濫用し、債務不履行の事業に対して従業員を解雇することは、以下の罰則に当たる場合があります*5。

・法人格の取り消し

・公序良俗違反

・労働組合が編成されていた場合は、組合員に対する不利益な扱いとされ不当労働行為とされることがある

 

まとめ

まず前提として、事業承継の際に引き継がれる労働条件は契約書にもとづいたものです。

雇用契約を結ぶ際はまず、従業員側も不当な内容がないかを自身でしっかりと確認する必要があります。

そして、たとえ事業承継の際に組織編成が行われる場合であっても、

従業員の待遇を含む労働契約内容は承継前の会社と同等の内容が引き継がれるべきということは、法律によって明らかにされています。

労働組合があるような大企業では、この内容が全うされやすいかもしれません。

 

しかし、事業承継がなされるのは大企業ばかりではなく、中小企業も同様です。

労働組合がある中小零細企業は全体の3%と言われており、従業員の権利は大企業のそれと比べ危険にさらされやすい状況ゆえ、

従業員側も企業に全てを委ねず自身で自分の権利を守ることはとても重要です。

労働組合がない場合も、所属する組織や雇用形態に関係なく組織される労働組合、

いわゆるユニオンという組織もあるため、不安な方は一度加入を考えてみてはいかがでしょうか。

 

関連:事業承継とは?知られざる種類から進め方までわかりやすく解説する!

 

参照: 第1章(4)- イ - (ハ) 会社分割を理由とする解雇等

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