企業同士はお互いに協力していくことでより大きな利益を得あることができます。
その過程で行われるものに「資本参加」というものがあります。
資本参加という言葉を聞いたことはあるものの、本当の意味まではなかなかわからないという方も多いです。
「資本提携」と同じ意味では?と考えている方もいるかもしれません。
そこで今回は資本参加について詳しく解説していきます。
事例も含めて解説していくのでぜひ資本参加について理解を深めましょう。
目次
資本参加ってどんな意味?
資本参加という言葉は資本面において会社同士が協力するような意味なのかな?
となんとなく理解されている方もいいのではないでしょうか。
資本参加とは他社の株式を取得したり、保有したりすることで関係性をより深いものにすることです。
資本提携という言葉があり、同じだと考えているかもしれませんが実は意味合いが違います。
資本提携はお互いの会社の株式をお互いが保有するものです。
一方、資本参加は優遇している会社に対して株式を保有したり取得したりすることで資金を提供します。
資本提携はお互いに協力し合う形になりますが、資本参加は一方的に協力するという形になります。
一方的に協力する資本参加は買収に近い形のように感じるかもしれませんが買収とも違います。
買収の場合、経営者が変わってしまうので企業の経営方針や業務内容でさえ変わってしまう可能性があります。
しかし、資本参加は違います。
企業を株式取得によって資本面で協力をしますが、企業はそのままであり資金面などで協力してもらうだけなので今まで通りの経営体制が存続します。
しかも資本参加では経営権を脅かすような株数を取得したりすることもしないので資本参加をしてもらう企業は独立性を保つことができるのです。
このように協力してもらう関係性のことを資本参加と言います。
資本参加のメリット
資本参加は企業に資金面などで協力してもらう形になりますが、どういったメリットが具体的にあるのでしょうか。
資本参加のメリットについてご紹介していきます。
信頼関係の強化
資本参加を行う方の企業では資本面で企業を支援することができます。
そのため、一般的な業務委託の契約よりもより強い信頼関係を得ることができます。
赤字企業に業務を委託すれば、万が一の際に納品が遅れてしまうといったこともないわけではありません。
資本参加では資金面で支援ができるのでより円滑な取引につながります。
利益の上昇
資本参加をしてもらった方の企業は資金の面で支援をしてもらえます。
設備投資を行って商品の納品数を大幅に増やすことができたり、新しい商品を開発したりすることができます。
資本参加で協力をした企業側ではなかなか新しい商品開発をするのが難しかったり、時間的に余裕がなかったりする場合、
協力企業に資金面で支援することで新たな利益を作ることができます。
お互いの利益にプラスになることも資本参加の大きなメリットと言えます。
資本参加で絶対に注意しておくべきこと
資本参加において、メリットばかりのように感じますが、残念ながらデメリットもあります。
資本参加は順調な大手企業だけでなく中小企業でも「資本参加に協力してほしい」と持ちかけられることがあります。
取引数の多い企業から資本参加の協力の申し出があれば断り辛いです。
また、お互いのために資本参加をした方がいいかもしれないと考える経営者の方も多いです。
資本参加を持ちかける企業側もただ資本を援助してもらえるわけではありません。
以下のような注意点があります。
株式を保有する
決議権を決定するほどの株式を保有しないとはいえ、資本参加を受けていれてくれる企業は株主総会における経営方針への参加権を得ます。
そのため、一定の影響力を資本参加した企業は得ています。
ですので、どの程度資本参加を行ってもらうのか、もしくは行うのかを事前にしっかりと考えておく必要があります。
一定の株主を保有するので、資本参加ではなく、買収にならないように注意する必要があります。
お互いWin-Winの関係性でなくなる可能性がある
資本参加の前提はお互いに利益が大きくなる、Win-Winの関係性です。
資本参加は相手企業に資本を援助してもらう一方的な関係性のようで、資本を援助する企業にもメリットがあって資本参加をします。
株式を保有して資金を援助することで新しい商品開発をしてもらい、自分の会社でより大きな利益を生むことで、資本参加に投資した資金以上の利益を得ることで前提です。
しかし、資本参加を受け入れる企業がその利益を確保できないことも当然あります。
ですから、お互いの関係が一方的にならないか、お互いに利益をもたらすことができるのか、関係性を見極めることも資本参加においては注意が必要なのです。
関係性の崩壊
資本参加はお互いに良好な関係性を持つ会社同士で行われます。
特に資本参加をした場合は、長期間、資本参加をした企業とは関係性が続きます。
契約だけの関係であれば、商品にトラブルがあった時には、契約を取り消すことができます。
信頼できないと判断したときに、ビジネス上の関係を切ることができます。
しかし、資本参加を行った場合、資本参加をした以上、受け入れた企業は今まで以上の品質の商品を納品したりすることが求められます。
資本参加をした企業側も資本を支援しているので、支援した企業と一定期間取引をしないと、投資した以上の利益を取り戻すことが難しくなります。
したがって、資本参加を行う企業は、その会社が本当に資本面で協力した際に、投資した以上の利益を得ることができる企業なのかを見極め、長期的に取引ができるのかを見極める必要があります。
資本参加の判断を間違えば特に資本面で協力した企業は損失が大きくなり、結果的に信頼関係が崩壊していきます。
長期的な関係性がしっかりと気付けるかも事前に考えておきましょう。
資本参加の具体的な事例
資本参加のメリットや注意点について理解したところで具体的には資本参加をした企業にはどんなものがあるのでしょうか。
具体的な事例をご紹介していきます。
ご紹介するのはKDDIが、LGIグループが保有するジュピターテレコム株を3,617億円で取得した資本参加の事例です。
KDDIは多くの方がご存知の通りの携帯電話でも有名な日本の電気通信事業者で、通信業者の中でも大手企業です。
そんなKDDIは、LGIグループの株式をなんと3617億円という額で、資本参加を決定しました。
LGIグループの会社はケーブルテレビ局や番組供給事業を運営する会社です。
KDDIが資本参加することによって、約327万世帯の顧客を新たに獲得することができ、通信企業として新たなサービスを提供することができました。
KDDIとLGIグループは資本参加によって新たな顧客を獲得し、お客様にとってより品質の高いサービス提供を行うことが可能となり、まさにWin-Winの結果といえるでしょう。
株式会社ジュピターテレコム (本社: 東京都千代田区、代表取締役社長: 牧 俊夫 以下、J:COM) は、本日開催の取締役会において、ジュピターショップチャンネル株式会社 (本社: 東京都中央区、代表取締役社長: 篠原 淳史 以下、ショップチャンネル) の株式50%を取得することを決議いたしました。
同時に、KDDI株式会社 (本社: 東京都千代田区、代表取締役社長: 田中 孝司 以下、KDDI) は、住友商事株式会社 (本社: 東京都中央区、代表取締役社長: 中村 邦晴 以下、住友商事) が現在保有しているショップチャンネル株式のうち5%を取得します。J:COM、住友商事、KDDIの3社は今後協力して、ショップチャンネルの更なる企業価値の向上ならびに顧客満足度の向上に努めてまいります。
引用元:KDDIの事例
まとめ
資本参加は、株式を取得したり保有したりすることによって資本面で企業を支援することです。
買収であれば企業自体が変わってしまう可能性がありますが、資本参加では資本参加を受け入れる企業は独立性を保ったまま関係性を築くことができます。
大手企業だけでなく、中小企業でも資本参加が行われています。
メリットもありますが、注意すべき点もあるので、資本参加を行う、受け入れるときは十分に注意しましょう。
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