会社を清算する場合にはさまざまな手続きが行われますが、手続きの一つとして「残余財産の分配」があります。
残余財産とは、会社の資産を換金し、債権者に債務を弁済して残った財産のことです。
原則として、株主が保有する株式の数に基づいて財産の分配が行われることになります。
残余財産の分配について理解する前に、「清算」に関する内容を把握しておきましょう。
目次
清算とは?
清算という用語は、主に会社を解散する場合に使われますが、もともとの意味は「お金の貸し借りの状況を確認して、貸し借りを終了させる」というものです。
つまり、会社の債務と債権の内容を確認して、資産を換金し、債務を弁済したうえで、最終的に会社を消滅させることが清算となります。
会社の消滅までに債務を弁済することが「清算」
清算とは、元の意味は「お互いの貸し借りについて計算し、借りた分については返し、貸した分については返済を求めて、貸し借りを終了させること」を指します。
清算は多くの場合、会社が解散したときに使われる用語です。
清算とは、会社を解散する場合に資産を売却し、売却で得た資金を元手に債務を弁済して、
会社経営における貸し付け、借り入れを全て終了させる一連の流れとなります。
清算は、会社が解散を決議することによって開始されます。
会社が解散する理由は以下の7種類です。
- 定款で定めた存続期間の満了
- 定款で定めた解散事由の発生
- 株主総会の決議
- 合併により会社が消滅する場合
- 破産手続開始の決定
- 裁判所による解散命令
- 休眠会社のみなし解散の制度
上記のように、会社を解散する理由にはさまざまなものがありますが、一般的には会社の解散は株式総会で決議されます。
清算を行うにあたっては清算人を選任しますが、清算人は株主総会で決められるか、定款に定めておきます。
多くの場合は、会社の経営者か弁護士が清算人となります。
会社を解散すること、および清算人を決めたら、解散後2週間以内に法務局へ申請します。
また、「官報」に公告し、解散したことを債権者に知らせます。
その後、資産と負債の明細が記載されている「財産目録」と、資産と負債の状況が記載され、
企業の財政状況を把握できる「貸借対照表」を作成し、株主総会の承認を受けます。
会社の財産の状態を把握したうえで、売却できる資産は売却し、売却した資金を元手に債権者に債務をできる限り弁済します。
債務を全て弁済できた場合は「普通清算」となりますが、債務を全て弁済できない場合は「特別清算」となります。
普通清算と特別清算については、以下で詳しく説明します。
債務を全て弁済できる「普通清算」
普通清算とは、会社の資産を全て売却したときに、抱えている債務を全て弁済できる清算方法のことです。
そのため、普通清算を行うとある程度の財産が残る形となります。
普通清算の流れとしては、会社の資産を全て売却し、債務を全て弁済して、残った資産を株主に配分する「残余資産の分配」を行います。
なお、残余資産の分配については後述します。
その後、清算人が株主総会で決算報告を行い、総会で承認を受けた時点で会社は消滅となります。
最後に、法務局で「清算結了登記」を行うことで、会社の登記簿が閉鎖されるため、会社は完全に消滅することになります。
参照:法務局「清算結了登記」
普通清算は、いわゆる「倒産」の状況にはならないことが特徴です。
債務を確実に弁済できるという面から見れば、債権者に対して迷惑をかけることのない清算方法といえるでしょう。
債務超過の疑いがあるときに行う「特別清算」
特別清算とは、会社の資産を全て売却しても、全ての債務を弁済できない状態である「債務超過」の疑いがある場合に行われる清算方法のことです。
ただし、債務超過の疑いがある状態で清算として進めていたとしても、資産を売却して債務を全て弁済できれば普通清算となります。
特別清算は普通清算とは異なる状態で清算の手続きが行われます。
会社の解散、清算人の選任、官報公告までは普通清算と同じ流れとなりますが、
特別清算の場合は資産を全て売却しても債務を弁済できないとみられるため、裁判所に対して特別清算の申し立てを行うことになります。
その申し立てを裁判所が認めた時点で、特別清算開始決定がなされ、会社の清算手続きは裁判所が監督します。
そのため、特別清算が開始されると清算人自身が財産を処分することはできなくなりますが裁判所の許可があれば財産の処分が可能です。
清算人が負債額を確定させたうえで債権者集会を行います。
債権者集会を実施する前には、清算会社側と債権者が和解できそうな内容の協定案を作成しておきます。
債権者集会で協定案が認められれば、協定案に基づいて、債権者に対し債務の弁済が行われます。
弁済が終了した時点で、裁判所は特別清算の終結決定を行い決定が確定した段階で特別清算終結の登記が行われ会社は消滅することになります。
債務超過が確実な場合に行う「破産」
破産とは、会社の資産を全て売却しても債務を弁済できない状態であり、裁判所に破産手続きを申し出ることです。
特別清算と破産は、資産を売却しても債務が弁済できない状態という点では似ていますが、
特別破産は債務が弁済できないことが「疑われている」状態で行い、破産は債務が「確実に返済できない状態」で行う点に違いがあります。
そのため、破産は特別清算と比べると手続きの内容が厳しいものとなっており、資産の管理は「破産管財人」によって行われます。
特別清算の場合は、裁判所の許可を受ければ財産を処分することができますが、
破産の場合は破産管理人が資産を管理しているために、会社の経営者は今まで保有していた資産に対して何もできない状態となります。
なお、特別清算は株式会社だけが利用できるのに対し、破産は株式会社以外の会社も利用することができます。
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残余財産の分配とは?
普通清算の場合、債務を全て弁済した段階でいくらかの財産が残ることになるため、その財産については株主に配分されることになります。
なお、財産は株主の人数に応じて配分されるのではなく、株式の保有数に応じて配分されます。
株主に残った財産を分配する「残余財産の分配」
残余財産の分配についてみていく前に「残余資産」について説明すると、
会社を清算し、資産を売却して債権者に債務を弁済したときに残った財産のことです。
残余財産の分配とは、会社を清算したときに生じた余剰の財産を、株主に分配することを指します。
残った財産を株主に分配する場合、株主が保有している株式の数に応じて分配されます。
株主の人数に応じて均等に分配するのではない点に注意が必要です。
そのため、株式の保有数が多い株主に対しては多くの財産が分配されますが、株式の保有数が少ない株主に対しては分配される財産は少なくなります。
なお、残余財産の分配は、清算をした後に財産が残っている場合にのみ行われるものであるため、
清算すると財産が一切なくなる特別清算の場合は、残余財産の分配は行われません。
種類株式を発行している場合、残余財産の分配は?
残余財産の分配は株式の保有数に基づいて行われますが、株式会社によっては、権利の異なる株式である「種類株式」を発行している場合があります。
種類株式の例としては、一般的な株式と比べて剰余金の配当額が多かったり、
あるいは少なかったりする株式や、残余財産の分配において多く分配されたり、あるいは少なく分配されたりする株式などです。
残余財産の分配を行うにあたっては、種類株式の内容に応じて分配します。
例えば、保有している株式が、残余財産の分配が少ない種類のものであった場合、保有している株式の数が多かったとしても、
残余財産の分配は少なくなります。
残余財産を現物で分配する「現物分配」
現物分配とは、残余財産を金銭で分配せず、不動産などの現物で分配する方法のことです。
通常、残余財産を分配する場合は、金銭で分配することが一般的ですが、清算人の決定により現物での分配が行われることがあります。
なお、現物分配の場合は金銭による分配とは異なり、公平に分配することが難しいため、
株主が保有している株式の保有数が一定数を下回る場合は、残余財産の割り当てが行われないこともあります。
まとめ
会社を清算する場合、残余財産が分配される場合がありますが、分配されるのはあくまでも清算後に財産が残っている場合に限られます。
清算によって財産が0円となってしまった場合は、当然のことながら財産が分配されることはありません。
また、財産は株主に分配される形となりますが、株式の保有数に応じて財産の分配が行われることを理解しておきましょう。