会社買収の基礎知識

表明保証条項とは?M&A(事業・株式譲渡)に携わる買い手・売り手双方のメリットと事例を交えてわかりやすく解説。

 

M&Aにおける取引の中で、説明された条件と現実がかけ離れる場合があります。

しかし、「表明保証条項」を盛り込んでおくことにより、一定のリスクを回避することができます。

 

この条項にはどのような意味があり、M&Aに携わる両者にとってどんな影響があるのか?

判例はどうなっているのか?

など、さまざまな情報を詳しくお伝えします。

 

表明保証条項とは

表明保証条項という言葉を簡単に説明すると、「契約書等に記載している内容に嘘が無く、それを保証する」という意味を持つものになります。

M&Aの局面では、交渉段階も含めて、さまざまな情報を先方に開示することになります。

 

関連:会社買収の基本的な流れや手続きとは?買収を有利に進めるためのポイントも解説。

 

この過程で自社の有利になるような「虚偽の報告」がなされる場合があります。

特に買い手からすると、これは深刻です。

契約を締結した後に売り手側の嘘が発覚した場合には、多大なる損害を生む可能性を否定できません。

 

買い手から見た表明保証条項

買い手側の企業としては、この点について特に憂慮すべきです。

契約を締結した後に売り手側の嘘が発覚した場合には、買収価格、新しく統合した会社風土、文化、社員の多様化などから、多大なる損害を生む可能性があります。

 

そんな場合に役立つのが表明保証条項です。

表明保証」を契約に盛り込むことによって、相手が取引の中で嘘を付いていた場合に、責任を求められるようになります。

 

つまり、買い手企業にとっては、M&Aに潜むリスクを低下させられる条項であることから、昨今では日本国内におけるM&Aでも広く活用されています。

 

関連記事:

 

 

売り手から見た表明保証条項

仮に買い手側に対して故意に伏せている情報や、説明義務がある情報を伝えなかった場合、表明保証条項に違反してしまう可能性があります。

 

仮にこの条項に違反することが認められた場合には、買い手側から「ペナルティ」を問われることになります。

 

そのため、買い手側の企業からは可能な限り多くの条項を記載するよう求められることが普通です。

売り手としてはそれを交渉材料に使うことも可能です。

 

M&Aが買い手側の一方的な優位で終わることは珍しいです。

売り手側としては表明保証条項を減らすことや、軽減させることを要求し、調整しながら妥結を目指すことになります。

 

表明保証事項が重要視される理由

買い手側企業としては、最終的な交渉成立を前に、「デューデリジェンス」を行って買収先企業のリスクを確認するための調査を行います。

関連:「デューデリジェンス(DD)」とは何か?種類や流れ、目安の期間に加え、行うべき理由を紹介。

 

しかし、現実的にはデューデリジェンスだけで買収先の企業を完全に把握することは難しいです。

買収完了後に思わぬ問題が明るみに出る可能性があります。

 

そこで有効な策として登場したのが表明保証条項であり、これを使うことによって、買収先をけん制する手段にすることが可能です。

 

買収先にとって不都合な事情を隠されてしまうリスクはM&Aに付き物です。

条項に、「表明保証条項によるペナルティ」を設けることで、強い抑止力にすることができます。

 

表明保証条項の内容

この条項の内容は、買い手と売り手の双方が話し合って決めることになります。

しかし、だいたいのケースでは定められる内容が決まっています。

 

例えば、簿外債務、あるいは偶発債務を隠していないかどうか。

訴訟等に巻き込まれていないかどうかという点は特に重視されます。

 

関連記事:簿外債務とは何か?買収側・売却側双方に生じる問題やその発見方法・解決策を紹介。

 

また、財務諸表をはじめとしたデータに偽りがないかどうか?

事業内容に誤りがないかどうかという点についても、厳しく精査した上で条項化されることが一般的です。

 

何の条件を盛り込むべきかは、業種や会社によって優先すべきものが異なります。

M&Aを支援する会社(仲介会社)に時間をかけて相談することをおすすめします。

 

関連記事:中小企業の事業承継に適したおすすめのM&A仲介会社を紹介。

 

売り手にとって必ずしも不利ではない

ここまでの条件を見ると、表明保証条項は売り手にとって圧倒的に不利に感じます。

しかし、実際のところは必ずしも不利というわけではありません。

 

自社にとってやましい所がない場合、自信を持って表明保証条項を取り入れることができます。

これにより買い手側の信頼を確保しやすくなるためです。

 

買い手の立場としては、買収元となる売り手が自信を持って情報を開示していれば、安心して買収に踏み切れることになります。

 

これにより、売り手企業の価値そのものも上昇することになり、売買がスムーズに進みやすくなるほか、より有利な条件を引き出せる可能性も高まります。

 

表明保証条項に違反した場合はどうなるのか(契約そのものの解除は有効?)

もしも表明保証条項に違反する部分が認められたという場合には、M&Aの内容そのものを見直す事態にまで発展する場合があります。

 

状況次第では、損害賠償条項や保障条項に基づいた賠償請求を売り手側に対して行うことになり、最悪の場合にはM&Aの成立そのものが取り消されることもあり得ます。

 

長い時間をかけて妥結まで導いたM&Aが降り出しの状況にまで戻ってしまうため、これは買い手・売り手の両方にとって得策とは言えません。

特に売り手にとっては、予定していたキャッシュの配分や株式の譲渡が行われないことになりますから、非常に大きなリスクになります。

 

そのため、M&Aと向き合う際には必ず表明保証条項を意識し、これに違反しないように正直な対応をしなければなりません。

 

表明保証条項に明確な違反があることが分かった場合、買い手側は売り手側を訴えて、損害賠償を要求できるようになります。

 

しかし双方にとってダメージが大きいと判断する場合や、売り手側に体力が残っていない場合は、契約そのものの解除という選択肢も視野に含まなければなりません。

 

ここまでの過程において、デューデリジェンスを含めてM&Aの交渉には長い時間と高額な費用を費やしていることは確実です。

したがって契約解除という道を選ぶことは、それまでの努力をすべて水の泡にする策なので、最後の手段として考えるべきでしょう。

 

売り手側の契約違反が認められる場合も、契約解除した際の損害と天秤にかけた上で、どちらが得になるのかを細かく計算することが大切です。

 

表明保証条項による裁判例

表明保証条項に違反したとして買い手側が訴えを起こした裁判では、買い手の主張が認められたケースと、認められないケースが見受けられます。

 

双方の判例を確認しながら、もしも条項に違反があるという理由でトラブルが起きた際には、その後どのような道を辿ることになるのかチェックしてみましょう。

 

買い手が勝訴した例

企業買収が目前に迫った段階で、買い手のX社が売り手のY社にデューデリジェンスを行い、買収が決まりました。

しかし、財務諸表に相違があることが分かったという例です。

 

具体的には、帳簿よりも高い評価額で買収が成立したことが問題となりました。

買い手側が損害賠償請求を起こし、これが認められたという事例になります。

 

東京地裁平成18 年1月17 日判決

〔事実関係〕

X が、Y1 ~ Y3 との間で、監査法人に委任してデューディリジェンス(DD)を実施した後、Y らが保有する消費者金融会社全株式を約2 ヶ月前の時点の貸借対照表に基づく財務状況から評価された株価で買い取るとの株式の譲渡契約を締結した。

その後A が評価時前の期において赤字決算回避のため、元本に充当していた和解債権について、利息へ充当したことにして、元本につき貸倒引当金の不計上が判明した。

X は、本件株式譲渡契約におけるAの財務諸表及び貸出債権の残高が完全且つ正確だとの各表明保証条項に違反を理由に、不当に資産計上された利息充当額の損害金を求め、訴えを提起した。

 

〔判旨〕 判決は、本件和解債権処理に関して、表明保証条項違反を認め、損害賠償請求を認容した。

本判決は、「XがY らが本件表明保証を行った事項に関して違反していることについて善意であることがX の重大な過失に基づくと認められる場合には、公平の見地に照らし、悪意の場合と同視し、Y らは本件表明保証責任を免れると解する余地があるというべきである。」とも判示しながら、本件では、DD は買主の権利であって義務ではなく、買収交渉の限られた期間に行われること、和解債権の精査方法について特段の問題がなく、A の作成した財務諸表等が会計原則に従って処理がされていることを前提としてDDを行ったことは通常の処理であって、それ自体は特段非難に値しないとして、重過失を認めなかった。

 

引用元:弁護士法人苗村法律事務所「M&Aにおける表明保証条項の法的意義(18.May.11)」

 

買い手が敗訴した例(一部容認)

同様に、買い手側のX社が売り手側のY社を過大評価した状態で買収を完結させたとして、損害賠償を求めて提訴したというケースでも買い手が敗訴した例はあります。

 

このケースでは、X社はY社に買収時に支払った金額に見合う価値が無かったと主張しました。

しかし、表明保証条項の存在により裁判所から却下(一部容認)されました。

 

Y社は表明保証条項に正確な情報を記載していたことを裁判所が認めたものであり、C社にはそれを見抜くだけのチャンスが充分にあったという判決結果です。

これは、表明保証条項が売り手側の防御策に繋がることを示す判例として、貴重な資料の一つになっています。

 

東京地裁平成19 年7 月26 日判決

〔事実関係〕

X は、Y1 から、飲食店の経営等を行うY1 の子会社A に関する業務提携やM&A による買収を持ちかけられて交渉の後、Y ら(Y1 ~ Y3)との間でA の株式譲渡に係る基本契約を締結した。

X は、Aの資産は、契約前のY らの説明よりはるかに価値の低いものであり、原告が合計3 億円あまりの損害を被ったとして、Y らに損害賠償請求を求め、出訴した。

 

〔判旨〕 判決は、本件が企業買収に関することを理由に、表明保証条項は、「企業買収に応じるかどうか、あるいはその対価の額をどのように定めるかといった事柄に関する決定に影響を及ぼすような事項について、重大な相違や誤りがないことを保証したもので、」免責条項は、その保証に違反があった場合に損害補償に応じる旨を定めたものであると解するべきであり、財務諸表の内容が「重要な」点において正確であることを、同条〔6〕が「重大な」不利益が存在しないこと、「重要な事項」について記載が欠けていないことを、それぞれ保証する旨を定めているものと解されると判示した上で、Aの一店舗の中途退去に伴う違約金について、Y2 は賃貸人として、違約金発生を十分判断できたはずで、違約金が発生しないとX に説明した上で、後に違約金があるとするのは、真実保証に反するとし、Yらが中途解約による違約金の存在を説明しなかったのは説明義務違反だとして、損害賠償の一部を認容した。

 

引用元:弁護士法人苗村法律事務所「M&Aにおける表明保証条項の法的意義(18.May.11)」

 

 

まとめ

表明保証条項を盛り込むことにより、買い手側の利益を守りやすくなるだけでなく、売り手側の利益も守ることができます。

違反があった場合には、損害賠償や契約解除を求めることになります。

契約解除による損失も大きいため、何が一番の得策になるのかを熟考することが大切です。

 

関連:M&Aの形態の一つ「会社買収」の種類を手順やリスクを踏まえて解説

 

 

ー事業承継を考えている方へー

・会社を事業承継したいけど方法がわからない。

・事業承継をする相手を探したい。

こんな問題を解決できるサービスが「会社即売.com」です。

事業承継には様々な選択肢があります。親族間の承継、会社を他社に譲渡するなど。

・引退後の資金の獲得
・個人保証からの解放
・育てた会社の事業継続

上記を実現するべく、手数料無料で素早く売却できる「会社即売」にまずは相談してみましょう。

 

▷▷「会社即売.com」の詳細へ

-会社買収の基礎知識

Copyright© 事業承継プロフェッショナル , 2020 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.