M&Aの報酬の種類としては「中間報酬」や「月間報酬」などがあります。
関連: M&Aを実施するなら知っておきたい!着手金など手数料の相場は?
M&A仲介によって手数料体系は様々です。
近年は売り手に関しては着手金や月間手数料や基本契約書締結時に発生する中間手数料を免除するM&A仲介会社は増えてきています。
しかし、多くのM&A仲介会社はM&Aが成約した場合に成功報酬は手数料として徴収しています。
M&Aの成功報酬を計算する場合は、一般的に「レーマン方式」が利用されています。
企業の売却額に応じて成功報酬が決まる形となります。
売却額が高くなるほど、成功報酬の伸びが緩やかになる点が特徴となっています。
目次
M&A仲介の成功報酬とは?
成功報酬は、M&Aが完了した時点で支払われる報酬です。
成功報酬を計算するにあたっての基準となる数値は、それぞれの仲介会社によって異なります。
成功報酬に関する具体的な内容についてみていくことにしましょう。
M&Aが完了した場合に発生する「成功報酬」
M&Aにおける成功報酬とは、M&Aが完全に終了した時点で発生する報酬のことです。
成功報酬は譲渡側の企業、あるいは買収側の企業がM&Aが無事に完了したことについて仲介会社に対して感謝の気持ちを表したものといえます。
M&Aの仲介会社が依頼を受けた企業から受け取れる報酬は、成功報酬以外にも「中間報酬」や「月間報酬」があります。
中間報酬は、M&Aの基本合意が締結された場合に受け取れるものです。
月間報酬はM&Aの仲介会社に契約した時点からM&Aが完了するまでの間に毎月支払うものとなります。
中間報酬の目安としては50万円から200万円程度、月額報酬は0円~200万円程度であり報酬額は仲介会社によって異なります。
なお、成功報酬はM&Aの取引価格に対して1~5%程度となりM&Aにおける売却額が高くなるほど成功報酬も高くなる仕組みとなっています。
このことから、成功報酬はM&Aの実施において大きな割合を占めているといえます。
成功報酬の算出にあたって基準となるものは?
次に、成功報酬を算出するための基準についてみていくことにします。
算出の基準は、大きく分けると以下の3種類となります。
【成功報酬の3つの基準】
- 株式譲渡対価
- 移動総資産
- 企業価値
「株式譲渡対価」とは、譲渡側の企業が保有している株式の価値(時価)を指します。
「移動総資産」とは、株式譲渡対価に全ての負債額である「負債総額」を加えたものです。
「企業価値」とは、株式譲渡対価に「有利子負債」を加えたものを指します。
有利子負債とは、負債のうち利子をつけて返済しなければならないもので、借入金や社債などがあります。
なお、未払金や買掛金は利子をつける必要がないため、有利子負債には含まれません。
つまり成功報酬は以下の順で高くなります。
移動総資産 > 企業価値 > 株式譲渡対価
M&Aの仲介会社によって、成功報酬を計算する場合の基準はそれぞれ異なります。
その基準が異なると成功報酬の金額も異なる点に注意する必要があります。
成功報酬は仲介企業によってまちまちに
仲介会社によって成功報酬が異なることを説明していきます
例として、ある企業の株式譲渡対価が10億円、負債総額が4億円、有利子負債が3億円であるとしましょう。
成功報酬は(算出の基準額×手数料率)で計算できます。
基準となる額が株式譲渡対価の場合は10億円で済むのに対し、移動総資産を基準とする場合は(10億円+4億円)で14億円となります。
また、企業価値を基準とする場合は(10億円+3億円)=13億円です。
つまり、株式譲渡対価を元に成功報酬を計算すれば成功報酬を抑えられるのに対し、移動総資産を元に成功報酬を計算した場合は成功報酬が高くなることになります。
M&Aのコストを抑えるという観点からみれば、株式譲渡対価を基準としている仲介会社の方が適しているといえます。
しかし、株式譲渡対価を基準としている場合は不公平感があるという指摘があります。
総資産額が同程度であれば借入金の多い企業ほど株式価値が低くなり結果的に成功報酬を抑えられます。
一方、借入金の少ない健全性の高い企業ほど株式価値が高くなり成功報酬が増えることになってしまうのです。
その点、移動総資産を基準として成功報酬を算出すれば純粋に企業規模に基づいて成功報酬を決められるため公平性が高いといえるでしょう。
成功報酬の算定方法に用いられるレーマン方式とは?
M&Aの成功報酬を算定する場合には「レーマン方式」が用いられています。
レーマン方式の計算式はやや複雑なものとなっています。
しかし、売却額が高額になるほど成功報酬の伸びが抑えられる仕組みであることを踏まえれば納得の計算方法といえるのではないでしょうか。
多くの仲介会社で採用されている「レーマン方式」
レーマン方式とは、M&Aを実施した場合の成功報酬を計算する方式のことで多くのM&A仲介会社において採用されています。
レーマン方式は売却額が低いほど手数料率が高く売却額が高いほど手数料率が低くなる仕組みとなっています。
レーマン方式の計算式はやや複雑なものとなっています。
売却額が少ないときほど成功報酬の伸びが大きくなるのに対し、売却額が高額になるほど成功報酬の伸びが抑えられる点が特徴です。
売却額に対する手数料の割合は各企業によって異なりますが、一般的な手数料率は以下のものが採用されています。
【レーマン方式】
- 売却額5億円以下の部分:手数料率5%
- 売却額5億円超~10億円以下の部分:手数料率4%
- 売却額10億円超~50億円以下の部分:手数料率3%
- 売却額50億円超~100億円以下の部分:手数料率2%
- 売却額100億円超の部分:手数料率1%
わかりやすく図示すると以下となります。
レーマン方式で計算する場合に気をつけたいことは、単純に売却額を手数料率で掛けるのではなく、
それぞれの売却額の部分に分けて計算していくことです。
レーマン方式の計算方法について詳しく説明するために、実例を元にして計算することにします。
計算例(1) 売却額3億円の場合
1つめの例として、売却額が3億円であるとします。この場合は、
「売却額5億円以下の部分:手数料率5%」を利用して計算します。
成功報酬を計算すると(3億円×5%)=1500万円となります。
売却額が5億円以下の場合は、単純に(売却額×手数料率)で計算することが可能です。
計算例(2) 売却額30億円の場合
2つめの例として、売却額が40億円であるとします。この場合は、以下の3種類を利用して計算します。
- 売却額5億円以下の部分:手数料率5%
- 売却額5億円超~10億円以下の部分:手数料率4%
- 売却額10億円超~50億円以下の部分:手数料率3%
売却額が5億円を超えた場合、売却額を分類する作業を行います。
例えば、売却額が30億円の場合は、以下のように分類できます。
- 5億円以下の部分→5億円分
- 5億円超~10億円以下の部分→(10億円-5億円)=5億円分
- 10億円超~50億円以下の部分→(30億円-10億円)=20億円分
上記に手数料率を掛けて計算すると以下の通りとなります。
- 5億円×5%=2500万円(1)
- 5億円×4%=2000万円(2)
- 20億円×3%=6000万円(3)
売却額40億円の場合の成功報酬額は(1)+(2)+(3)で計算できます。
結果的に成功報酬手数料は(2500万円+2000万円+6000万円)=1億500万円と計算できます。
計算例(3) 売却額300億円の場合
3つめの例として、売却額が300億円であるとします。
レーマン方式に基づいて300億円を分類すると以下の通りとなります。
- 5億円以下の部分→5億円分
- 5億円超~10億円以下の部分→(10億円-5億円)=5億円分
- 10億円超~50億円以下の部分→(50億円-10億円)=40億円分
- 50億円超~100億円以下の部分→(100億円-50億円)=50億円分
- 100億円超の部分→(300億円-100億円)=200億円分
上記に手数料率を掛けて計算すると以下の通りとなります。
- 5億円×5%=2500万円(1)
- 5億円×4%=2000万円(2)
- 40億円×3%=1億2000万円(3)
- 50億円×2%=1億円(4)
- 200億円×1%=2億円(5)
売却額40億円の場合の成功報酬額は(1)+(2)+(3)+(4)+(5)で計算できるため、
(2500万円+2000万円+1億2000万円+1億円+2億円)=4億6500万円と計算できます。
まとめ
M&Aの成功報酬に関して抑えておきたい点としては、成功報酬の算出基準は何かという点と、レーマン方式の計算方法を理解しておくこととなります。
この2つを理解しておくことによって、おおよそではあるものの成功報酬を計算できることから成功報酬はどの程度になるかが推測できます。
M&Aの報酬額は、他の報酬額と比べるとまとまった額になることから、成功報酬の算出方法を理解しておくことで、資金管理を計画的に行いやすくなります。