小売業とは、流通の最終過程といわれる販売者で、露天商やスーパー、百貨店など、個人商店から中規模・大規模小売店まで非常に多種多様です。
そんな小売業の方が廃業を決めたとき、その手続きは個人事業主として経営している場合と、法人化している場合とで大きく異なります。
直近だと2020年4月1日に小売流通業専門の出版社である商業界が破産手続きに入ったと発表し業界を震撼させました。
店を賃貸している場合と自社で持っている場合も必要な手続きは異なってきます。
今回は、小売業の廃業手続きの方法と注意点を解説していきます。
また廃業だけが解決策というわけではありません。会社自体を法人毎、売却するという手法についても解説しています!(→ジャンプ)
特に個人と法人の手続きの差は大きいですので、廃業の際の手続きの煩雑さをこの記事によって少しでもご理解いただければ幸いです。
目次
小売業を個人事業主として行っている場合
小売店経営を個人事業主として行っている場合、廃業手続きのメインとなるのは、諸々の書類提出です。
基本的には条件に沿って必要な書類を提出することで、廃業手続きは滞りなく受理されます。
ただし、必要となる書類をしっかりと整え、漏れなく全部提出しなければ廃業の申し出が受理されないこともあります。
いざ廃業に直面した時に慌てないようしっかりと計画を立てておいて、必要書類は抜かりなく提出しましょう。
具体的に必要な手続きや書類提出は、以下の7つとなります。
・基本的に全ての個人事業主に必要となる3つの手続き
1. 廃業日を事前に決め、顧客や主要取引先への挨拶と周知を徹底
2. 「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出
3. 廃業届を都道府県税事務所へ提出
・条件により必要となる4つの手続き
4. 「青色申告の取りやめ届出書」の提出(青色申告を行っている場合)
5. 「事業廃止届出書」の提出(消費税の課税事業者である場合)
6. 「給与支払い事務所等の開設・移転・廃止の届出書」の提出(給与支払いを行っている場合)
7. 「所得税および復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」の提出(予定納税を行っている場合)
廃業日を事前に決め、顧客や主要取引先への挨拶と周知を徹底
まずは廃業日の決定から始まります。
廃業日の決定は早ければ早いほどよく、以後の廃業手続きに時間がかけられるよう、余裕を持って設定しましょう。
廃業日決定次第、すみやかに主要取引先、顧客へ挨拶に伺い、告知・周知を行います。
廃業日決定および挨拶回りを行うべき時期の目安としては、廃業日の1〜3ヶ月前といったところでしょう。
ある程度長く営業しており規模が大きい場合は6ヶ月前くらいの告知の方がいいかもしれません。
「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出
基本的には廃業日の決定と取引先・顧客・従業員等への周知を除けば、他は全て書類の提出になります。
まず個人事業主としての廃業届は、全ての開業個人事業主が廃業の際に提出しなければならないものです。
提出期限は廃業日から1ヶ月以内、事業所在地所轄の税務署へ提出します。
廃業届を都道府県税事務所へ提出
都道府県税事務所への廃業届も提出が必要という点は見逃しがちですので注意しましょう。
提出期限は都道府県により異なりますが、廃業からおおよそ10〜15日以内に提出する必要があります。
条件により必要となる4つの手続き
そのほかについては特定の条件に当てはまる場合のみの手続きです。
「青色申告の取りやめ届出書」は青色申告を導入している個人事業主のみ提出する必要がある書類で、期限は青色申告を止める年の翌年の3月15日までとなっています。
「事業廃止届出書」は消費税課税事業者である場合のみに、課税事業者としての立場をやめます、という申し出として提出する必要があります。
提出期限は廃業日から数えて1ヶ月以内、所轄の税務署への送付ないし持参をもって提出となります。
「給与支払い事務所等の開設・移転・廃止の届出書」は従業員等に給与支払いを行っている個人事業主のみ提出が必要な書類です。
期限は廃業日から1ヶ月以内、所轄の税務署への送付あるいは持参にて提出できます。
「所得税および復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」は予定納税を行っている個人事業主のみ提出する必要がある書類です。
別途「損益計算書」(1部)を添付する必要がある点に注意が必要です。
小売業を法人として行っている場合
一方、法人として経営している場合は、組織内の所定の決議でもって解散承認を行い、対外的に公告や所定の登記を行わなければならないなど、より複雑かつ段階的な手続きとなり、個人事業主ほど簡単にはいきません。
ただ、書類提出に偏らない分、ざっくりとしたステップの見通しをつけやすく、組織内外の多くの人間が関わるため、見通しをはっきりつけやすいという特徴があります。
法人の廃業手続きとしては、以下の7つが挙げられます。
1. 廃業日の決定および取引先・顧客への挨拶状送付等
2. 株主総会で解散承認・清算人の選任の決議
3. 解散・清算人の法務局への登記
4. 解散届出
5. 官報での解散公告
6. 清算人による清算・整理
7. 清算確定申告・確定保険料申告
廃業日をできる限り早く決めて関係者への周知を行う点は個人事業主と同じです。
ただし法人であれば個人事業主よりも多くの人が関わり、規模も大きいですので早い期間に廃業日の決定と周知をすべきです。
目安としては3~6ヶ月前くらいでしょう。
早ければ早いほど時間をかけて計画的に動けますので、余裕を見て1年前には廃業日を決めておきたいところです。
廃業日の決定および取引先・顧客への挨拶状送付等
大口の取引先を筆頭に多くの顧客・取引先への告知が必要になりますので、可能であれば「廃業挨拶状」を作成の上で挨拶回りや挨拶状の送付を方々に済ませておきましょう。
廃業日を決めて挨拶回りを済ませたら、株主総会で解散の承認と、清算人の選任を行います。
株式会社の場合では、株主参加の特別決議、ないし書面での全株主による書面決議でもって決議を行い、特別決議の場合では3分の2以上の賛成、書面決議では全株主の賛成を得ることで解散が承認されます。
株主総会で解散承認・清算人の選任の決議
有限会社の場合は議決権を持つ株主の半数以上が出席している株主総会において4分の3以上の賛成が得られれば解散が承認されます。
なお、有限会社の場合では清算人の選任は株主総会で決議する必要はなく、決議がなく定款により定めがない限り、清算人は取締役が担当します。
解散・清算人の法務局への登記
解散の承認および清算人の選任が終わったら、株主総会後2週間以内に、事業所在地の法務局に対し登記を行う必要があります。
解散届出
また廃業の際にはさまざまな税務上の届出を行わなければなりません。
例えば、都道府県税事務所に対しては法人住民税や法人事業税に関する届出を、所轄の税務署には法人税関連の書類を提出します。
労働保険に関する諸々の届出は管轄のハローワーク宛に行います。
官報での解散公告・清算人による清算・整理
解散の公告は官報にて行い、連続2ヶ月以上の掲載が義務付けられています。
清算人による資産および債務の整理・弁済を行う際、残余財産が残ればそれは株主へ配分しなければなりません。
清算が終わったら再度株主総会を開き、清算完了後の決議報告書の承認を得て、法務局に対して清算結了登記を行います。
清算確定申告・確定保険料申告
最後に「清算確定申告書」および「確定保険料申告書」を、廃業日から50日以内に提出する必要があります。
また、確定保険料申告書には「労働保険料還付請求書」も添付する必要があるので注意しましょう。
飲食業の場合は別途専用書類の提出が必須なので注意!
以上、個人事業主の場合と法人の場合に分けて、廃業に係るさまざまな手続きについて説明してきました。
しかし、特定の業種では、これ以外にもさらに特別な書類を提出しなければなりません。
例えば飲食店は、意外にも小売業に分類されていることをご存じでしょうか。
経済産業省による産業分類上、飲食店も小売業に分類されていますので、小売業と同じ法律の下で手続きすることになります。
しかし飲食店営業を行う際には特別な許可が必要で、例えば小売業でもイートインを設けているようなところは別途飲食店としての営業許可が必要です。
飲食業の場合では、保健所に対して廃業届とは別に、「飲食店営業許可書」の返納を行う必要があります。
提出期限は都道府県により異なりますが、おおむね廃業日から10日間となっているところが多いようです。
また、警察署に対しても風営法に基づく廃業の届出を別途提出する必要があります。
例えば深夜営業のバーや居酒屋など深夜時間帯に酒類の提供を行う業態であった場合、開業時に「深夜における酒類提供飲食店営業開始届出書」を提出する必要があります。
廃業の際はそれに対する「廃業届出書」を別途提出する必要があるのです。
スナックやキャバクラなどの場合はさらに「風俗営業許可証」の返納もあわせて必要になります。
小売店の設備や不動産の処分も必須
事業を廃止する上で必要な書面上、法律上、税務上の手続きだけでも膨大なものがあることがご理解いただけたのではないでしょう。
しかし、これはあくまでも事業そのものの廃業に関わる手続きというだけです。
小売店内の諸々の設備や事務用品、在庫などの資産、といったものの処分あるいは売却をしていかないとなりません。
法人の場合は清算人がこうした処分や整理を担当しますが、個人事業主の場合は自分の力で進めなければなりません。
小売業において処分する必要のある設備としては、冷蔵庫や空調機器、レジやバーコード読み取り機などの家電や、陳列棚などの巨大な設備、バックヤードの事務用品などさまざまです。
基本的には専門業者に全て売却するか、スーパーなど同業者が買い請けてくれる場合では、いわゆる「居抜き物件」として使っていた設備をそのまま残して・譲渡することもできます。
もちろん賃貸の場合は貸主、持ち店舗の場合は譲渡相手との交渉が必要になってきますが、売却・譲渡が滞りなく進めば、処分費用を抑えられるという利点があります。
不動産の売却や、賃貸契約の解約に際しては長期的な時間と労力がかかるものです。
早め早めに動いて、計画をしっかり立て、順序立てて着実に処分を進めていくことが肝要です。
廃業するくらいであれば会社を売却しよう!有限会社でも株式会社でも最短10日程度で売却可能!
廃業を考えられている経営者の方は行き詰まって視野が限定的になってしまっている可能性もあります。
会社が倒産しそうな場合の対策として廃業だけが選択肢ではありません。
廃業以外の選択肢として会社を売却するという手段があります。
個人商店の方の中には有限会社の方もいらっしゃると思いますが有限会社でも売却をすることは可能です。
関連:有限会社をたたむ前に売却を考えよう!株式会社とのM&A・会社売却方法の違いと売り方をわかりやすく解説する。
会社を売却することで上記で説明してきたような面倒な廃業手続きを行う必要はありません。
更に、以下の特典まで得ることができます。
- 売却によって資金を獲得できる
- 経営から解放される
- 赤字でも売却できる
- 個人保証からも逃れられる
会社売却ときけば長期間を要するイメージがあると思います。
しかし、当サイトでもすいせんしている「会社即売.com」では最短10日間で相談から売却まで実現することも可能です。
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廃業を考える前に一度、以下の公式ページから問い合わせてみるとよいでしょう。
まとめ
小売業の廃業手続きについて、手続きを進める順番や具体的な方法、注意点について解説してきました。
法人はもちろんのこと、個人事業での小売業であろうとも廃業を行う場合は時間と労力がかかるという算段のもとに計画的に行動することを心がけてください。
また、処分に際しても場合によっては(譲渡などがうまくいかなかった場合など)非常に高額な処分費用を背負わなければならない場合もあります。
処分費用が大きな負担になるために廃業を決意できないオーナーも多くいます。
できる限り早めに廃業日を決めて、特に売却や譲渡など資産に係る諸々の手続きや交渉に際しては弁護士を立てるなど、
なるべく専門家に任せるところは任せながら、自分でできる範囲でさまざまな手続きをしっかり進めていきましょう。
また、必ずしも廃業だけが選択肢ではありません。
会社を売却して資金を得てリタイアすることが最善の策なのです。
廃業手続きに入る前に一度、会社売却を考えてみましょう!