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多くの経営者にとって、事業承継は初めてのこと
会社の経営者が高齢化するなどして今後の経営が困難になることが予想される場合、会社を引き続き運営していくためには事業承継を行う必要があります。
しかし、事業承継は多くの経験者にとって初めての経験であるために、事業承継の具体的な方法が分からないと感じている経営者も多いことでしょう。
事業承継についての相談を受ける場合は、事業承継における問題を明確にしたうえで、専門家や専門の機関を選ぶことが合理的といえます。

事業承継の相談を行うポイントは?-事業承継に関する問題点を明確にしておく-
事業承継の相談を受ける場合、問題点が明確でなければ解決に至ることは難しくなりがちです。
一方、あらかじめ問題点を明確にしておけば、その問題を解決する方法が理解しやすくなるため事業承継に関する問題の解決に至りやすくなります。
事業承継の相談をスムーズに進めるためのポイントは、事業承継に関する問題点を明確にしておくことです。
問題点の一例としては、以下のものがあげられます。
・事業承継を考えているが、どこから手をつければ良いか分からない
・後継者が不在だが、なんとかして会社は存続させたい
・親族以外に会社を承継させることに不安を感じている
・後継者の候補はいるものの、従業員教育が大変そうだ
・M&Aで承継する場合、自社の条件に合った形で譲渡できるかどうか
・M&Aを利用して、会社が安値で売られることはないだろうか
・相続する場合に発生しうるトラブルが心配
・事業承継する場合、税金がどれくらいかかるか見当がつかない
多くの経営者にとって、事業承継は初めて行うものであるために、事業承継の全体像がつかめないと感じることでしょう。
そのような場合ほど、問題点を書き出すことが有効となります。
問題点を目に見える形にすれば、あとは専門家や専門の機関と相談しながら、その問題を一つずつ解決していくだけになることから、事業承継のめどがつきやすくなります。
事業承継について相談できる専門家・機関は?
事業承継を行いたいと考えていても、事業承継に関する業務は幅広い内容にまたがっているため、誰に相談すれば良いのかと迷ってしまうのではないでしょうか。
ここでは、事業承継を行う場合の相談先について紹介します。
税理士
事業承継において税理士を選ぶメリットは、企業の価値や財務状況を的確に算出できる点です。
M&Aにおいて企業を譲渡する場合、重要なポイントの一つとして企業価値があります。
税理士は企業価値を適切に算出できるため、譲り受けする企業に対して譲渡する側の企業価値を正しい内容で提示できます。
関連:デューデリジェンスとは何か?種類や流れ、目安の期間に加え、行うべき理由を紹介。
また、企業が保有する資産の中には、資産としての価値が低いものもあります。
しかし。税理士のアドバイスにより、そのような資産をあらかじめ売却しておくことで、企業の資産価値を高めることも可能です。
さらに、M&Aにおいては所得税や、相続税など、各種の税金に関する問題も生じることがあります。
税理士は税金に関する専門家であることから、M&Aにおいて生じる税金問題を解決しやすくなります。
弁護士
事業承継を行うにあたってはさまざまな問題が発生することがありますが、トラブルの防止に関しては弁護士が大きな役割を果たします。
事業承継において発生しやすい問題としては「相続」があります。
例えば、相続においては親族同士の間でトラブルが発生してしまうことがあります。
そのようなトラブルが発生したとしても、弁護士であれば適切な解決を図ることが可能となります。
そのほか、弁護士は事業承継において、株式の承継や後継者の育成、契約書などの各種書類の作成など、幅広い業務に対応しています。
関連:トラブルの解決のプロ!事業承継における弁護士の役割とは?
商工会議所・事業引き継ぎ支援センター
事業承継に関することについては、商工会議所で相談する方法もあります。
商工会議所を利用するメリットは、事業継承に悩む中小企業の相談窓口である「事業支援引き継ぎセンター」と連携している点です。
事業支援引き継ぎセンターは各都道府県に設置されておりまあう。
どのような形で事業承継を行うのかということや、事業承継で困っていることはどんなことか、ということを確認したうえで、必要に応じて専門機関の紹介を行うことがあります。
商工会に加入している場合は、商工会議所を通じて事業支援引き継ぎセンターに相談することも一つの方法です。
事業承継士
また、事業承継を行う場合は、事業承継に対する幅広い知識を有している「事業承継士」の資格を持っている人に相談することも有効となります。
事業承継士とは、一般社団法人事業承継協会が実施する講座を受講し、試験に合格して、一般社団法人事業承継協会に入会することで付与される資格のことです。
事業承継においては、税務に関する知識、法律に関する知識、資産価値の算出方法や後継者の育成方法など多岐にわたることから、専門的な知識だけに限らず、幅広い知識が求められます。
事業承継士は、これらの業務に関する知識を習得しているため、実践に即したアドバイスを受けられます。
事業承継士の資格は、税理士や弁護士などが保有している場合があります。資格保有者に関しては、一般社団法人事業承継協会のホームページで確認できます。
参考:一般社団法人事業承継協会 資格者一覧
https://www.shoukei.or.jp/menberlist
事業承継アドバイザー
事業承継アドバイザーとは、一般社団法人金融検定協会が付与している資格です。主に金融機関の支店幹部を対象とした資格といえますが、金融機関の勤務者以外も受験することができます。
最近の事業承継においては、親族内承継ではなく、親族外承継で会社を引き継ぐケースが増えているのが現状です。
そのような状況に対応するため、事業承継アドバイザーは事業承継に関する基礎的な知識や、親族内承継、親族外承継に関する専門的な知識を持っています。
事業承継においては専門的な知識が求められますが、事業承継に特化した資格を保有している人からアドバイスを受けられることは、心強いといえるでしょう。
M&Aの仲介会社
事業承継をM&Aという形で実施するのであれば、M&Aの仲介会社に直接相談することが効果的といえます。
M&Aを効果的に進めたいのであれば、M&Aを手がけてきた実績が多い会社に相談することで、より実践的なアドバイスを受けやすくなります。
また、会社を譲り渡す場合、多くの企業は何らかの条件を持っており、その条件が満たされることを求めるものです。
その条件をM&Aの仲介会社に伝えることにより、適切な譲り受け企業を紹介してもらいやすくなるメリットがあります。
M&Aを実施する方向で考えているのであれば、M&A相談会社に直接相談することを検討してみましょう。
相談先はどのようにして選ぶ?-どのような点が特に問題であるかは明確にしておこう!-
事業承継に関する問題は、さまざまな専門家や機関で相談できることが分かりました。
逆の見方をすれば、相談先が多いために、どこで相談するのが適切であるのか、ということが分かりにくいと感じるのではないでしょうか。
事業承継の相談先の選び方としては、どのような点が特に問題となっているか、ということを明確にしておくことです。
相談先を選ぶ場合のポイントとしては、「事業承継を行うにあたって、特にどのような点が問題となっているか」ということを明確にしておくことが大切です。
例えば、事業承継を行いたいと考えているものの、具体的な方法が定まっていない場合は、事業支援引き継ぎセンターで事業承継について相談して、
どのような方向性で事業承継を行うか、ということを決めるようにすると良いでしょう。
また、事業承継において親族内承継を行うと決めている場合、相続を行うにあたってトラブルが発生すると予想されるのであれば、
弁護士に事業承継を相談することでトラブルを防ぎやすくなります。
そのほか、事業承継をM&Aで行いたいと考えている場合は、他の専門家に相談するよりも、直接M&Aの仲介会社に相談した方が、M&Aをスムーズに進められるメリットがあります。
事業承継について相談できる機関や専門家はさまざまですが、事業承継に対する問題点を明確にしておくことで、事業承継に関する専門家や機関を選びやすくなります。
まとめ
事業承継に関する問題を相談したい場合、「どんなことが特に問題となっているのか」という点を明確にして、「どんな相談先があるのか」ということを把握しておくことが大切です。
問題の内容が明確となっているほど、相談先を絞りやすくなるため、事業承継の問題が解決しやすくなり、事業承継をスムーズに進めやすくなることでしょう。
(画像は写真ACより)