さまざまな理由によってトラック運送業を廃業する人がいます。
トラック運送業を廃業するときには、廃業の手続きが必要ですが、手続きには手間と時間がかかるので注意が必要です。
今回の記事では、トラック運送業を廃業手続きの流れや注意点について詳しく紹介します。
トラック運送業を経営している人や、今後トラック運送業の廃業を検討している人はぜひ参考にしてください。
また、廃業だけが選択肢ではありません。
会社を売却することができれば面倒な手続きも必要ありませんし資金を獲得することが出来ます。
後ほど詳しくお伝えしますが、会社売却という手段も考えてみましょう。
目次
トラック運送業者の現状
物流業界には7万5,000ほどの事業者がありますが、そのうちの80%以上はトラック運送業者です。
さらに、そのうちの70%は、一般貨物の運送業者となっています。
また、トラック運送業者の99%は、従業員が300人以下の中小企業です。
1951年に制定した道路運送法では、トラック運送業はバスやタクシーと同じように、道路を使ったサービスというくくりで扱っていました。
以下はトラック運送業者数の推移となっています。
1990年に貨物自動車運送事業法と貨物利用運送事業法が施行したことにより、新規参入のトラック運送業者が増加しています。
また、2003年の法改正による「営業区域制度廃止」や「運賃の事前届出制廃止」によりトラック運送業者での競争が激化しました。
トラック運送業を廃業するケースが増えている
現在では、輸送需要の伸び悩みや国土交通省による新規参入の許可基準が厳しくなったことによりトラック運送業者の数は減少傾向にあります。
加えて、トラック運送業では後継者不足という問題を抱えており、事業を継ぐ人がいないために廃業したケースもありました。
以下は帝国データバンクが発表している運輸・通信業の廃業数の推移です。
運輸・通信業の廃業 | |
2008 | 601 |
2009 | 679 |
2010 | 563 |
2011 | 596 |
2012 | 542 |
2013 | 600 |
2014 | 542 |
2015 | 463 |
2016 | 437 |
2017 | 451 |
2018 | 423 |
わかりやすく図示したものが以下となります。
通信業が混在しているため一概には言えませんが、毎年400件以上の廃業が発生し続けています。
運送業の廃業理由
後継者不足が深刻なのは勿論のことなのですが、その他にも以下の3つの要因があります。
- 競争激化
- 輸送貨物量の減少
- 人材の確保
まず最初にお伝えしたとおり、2003年の法改正による「営業区域制度廃止」や「運賃の事前届出制廃止」によって競争が激化していることが挙げられます。
参照:国土交通省「貨物自動車運送事業法施行規則等の一部を改正する省令について」
営業区域がなくなったため、今まで競合ではない会社とも競合することとなり競争が激化しました。
次に輸送貨物量自体の減少があります。以下の政策金融公庫のトラック輸送量の推移をご覧ください。
日本は当然人口減小国ということもあり輸送量自体も近年減少傾向にあることが分かります。
輸送量自体が減少し、更に大手とも戦う必要がある小規模業者にとっては厳しい経営環境と言わざるを得ないでしょう。
更に、近年の働き方改革の影響もあり人件費の高騰も経営を逼迫する要因となっています。
長距離輸送運転手は特にブラック労働として取り上げられるケースも多いので非難の標的になりやすい点も逆風ですね。
トラック運送業の廃業をするには、資産と負債の計算が重要
トラック運送業を廃業するときに大切なこととして、「資産と負債の計算」があります。
廃業手続きを行う前に、回収予定の売掛金、売却することで資産にできるトラックや駐車場などをすべて計算しましょう。
もし、負債よりも上回っているのであれば、廃業の手続きが可能です。
「廃業」に似た言葉として「破産」や「破綻」があります。
破産とは、経営を続けていくうちに負債を返済できなくなってしまい、破産法の適用を受ける状態のことです。
破綻とは、さまざまな理由により経営が難しくなり、それが原因によって会社をたたむことを意味しています。
一方で、廃業の場合には、必ずしも経営悪化が理由とは限りません。
経営は順調なものの、後継者がいない、体調が悪化したなどの理由で店をたたむときも「廃業」として扱います。
トラック運送業の廃業の流れ
トラック運送業を廃業できる状態である場合には以下の流れで手続きを進めます。
廃業のスケジュールを組む
トラック運送業を廃業するときには、最初に明確なスケジュールを組むようにしましょう。
きちんとしたスケジュールを組まないでおくと、資産を減らしてしまう可能性があります。
トラック運送業を廃業するときには、トラックや駐車場などの資産をすべて売却しなければなりません。
しかし、きちんとした廃業のスケジュールを組まない場合大きな損失を蒙るケースも存在します。
トラックや駐車場を廃業予定の前に売却してしまい、経営ができなくなったというトラブルが発生したケースがあるのです。
一方で、トラックや事務所は廃業予定日前に売却した場合もトラブルは発生しえます。
トラックを保管していた駐車場の解約手続きを怠ったために、廃業日のあとも駐車場代を払い続けることになったというケースもありました。
廃業手続きを行うときは、廃業予定日までにしておかなければならないことを書き出し、どの日に行うのかをしっかりと決めておきましょう。
駐車場を借りている場合は、契約解除のための事前の連絡が必要です。
前もって駐車場の管理会社と話し合っておきましょう。
運送用のトラックを含めた資産の整理をする
廃業のための明確なスケジュールを組んだあとは、運送用のトラックを含めた資産の整理をしましょう。
トラック運送業者の特有の資産として以下のものがあります。
トラック売却の際の注意点
トラック運送業を廃業するときには、トラックを売却して資産に変える必要があります。
トラックを売却するときには、買取り業者に依頼するのがおすすめです。
ただし、高く買い取ってもらうためには、複数の買取り業者に依頼して一番高い査定額を提示した業者に売却するようにしましょう。
トラックを売却して名義変更する場合には、以下の書類が必要です。
- 車検証原本
- 事業者の譲渡証明書(会社実印押印)
- 事業者の委任状(会社実印押印)
- 事業者の印鑑証明(原本3カ月以内)
車検証に記載のある住所と印鑑証明の住所が異なる場合には、履歴事項全部証明書による証明が必要です。
トラックを売却するときには、以上の書類を買取り業者に提出しましょう。
何らかの事情により、トラックを一時的に抹消する場合には、以下の書類が必要です。
- ナンバープレート
- 事業者の譲渡証明書(会社実印押印)
- 車検証原本
- 事業者の委任状(会社実印押印)
- 事業者の印鑑証明(原本3カ月以内)
トラックを売却する場合と同じように、車検証に記載のある住所と印鑑証明の住所が異なる場合には、履歴事項全部を証明書による証明が必要です。
上記の種類を持参して、ナンバー管轄の運輸支局や登録事務所で手続きを行いましょう。
駐車場売却の際の注意点
駐車場を売却するときには、トラックの売却のタイミングに注意しましょう。
トラックを売却して引き取ってもらう前に駐車場を売却してしまうと、トラックを保管できなくなり大きなトラブルに発展することもあります。
賃貸で駐車場を借りている場合についても、トラックの売却に合わせて契約の解除をしましょう。
解散確定申告と清算確定申告をおこなう
トラック運送業を廃業するときには、税金面での手続きが必要です。
手続きの中には、期限を明確に定めているものもあるので注意しましょう。
トラック運送業を廃業するときには、解散確定申告と清算確定申告が必要です。
【解散確定申告】
トラック運送業を廃業するときには、廃業日の属する事業年度開始日から廃業日までを1年とみなして、その期間に解散確定申告を行わなければなりません。
解散確定申告は、廃業日の翌日から2カ月以内と決まっています。
ただし、事情によっては、期限を1カ月の延長も可能です。
期限内に最寄りの税務署で確定申告書を提出して税金を支払いましょう。
【清算確定申告】
トラック運送業を廃業するために清算手続きを行っているときでも、各事業年度についての確定申告が必要です。
廃業日の翌日から1年ごとの期間を1事業年度とみなします。
事業年度終了日の次の日から2カ月以内に確定申告書を提出しなければなりません。
ただし、状況によっては期限が1カ月延長になる場合もあります。
確定申告書を提出したら、税金を支払いましょう。
上記のように、トラック運送業を廃業するときには、確定申告を2回行う必要があるので注意しましょう。
事業廃止手続きを行う
トラック運送業を廃業するときには、運輸支局での事業廃止手続きが必要です。
手続きを行う際に必要な書類は以下のとおりです。
【事業廃止届】
3部必要です。
2部を提出し、1部を控えとして残します。
参照:事業廃止届出書
【管理者の解任届】
運行管理者と整備管理者の解任届の提出をします。
【連絡書】
事業で使用したトラックの減車連絡書と手数料納付書を作ります。
連絡所には、輸送窓口で経由印が必要です。
参照:減車連絡作成要領
会社売却という手段を考えよう
今まで廃業の手続きについてお伝えしてきました。
ご覧いただいたように長い手続きの手順と、多くの書類を提出する必要があります。
また、廃業というネガティブな処理に踏み切るのは精神的にも負担がかかるかと思います。
そこで、近年注目を集めているのが会社を売却するという方法です。
会社を売却することであなたが経営してきた会社を次の世代に承継することができます。
更に当然売却資金を手に入れることができるのでリタイア後の生活資金を獲得することができます。
お金を得るどころか費用が発生する廃業と比べて会社売却は現経営者にとっても最良の選択肢なのです。
当サイトでもおすすめしている「会社即売.com」では赤字会社でも購入を考える買い手を抱えています。
経営が行き詰まっている、後継者がいないとお悩みの方は一度相談してみることをおすすめします。
会社即売では最短で10日以内でも売却が可能であり、資金繰りが困っている会社にもチャンスがあります。
まとめ
トラック運送業を廃業するときには、具体的なスケジュールを組むようにしましょう。
そうすることで、資産を減らしてしまうというトラブルを避けられます。
特に、トラックを売却するときには、駐車場の売却日や契約解除日をチェックしておきましょう。
トラック運送業を廃業するときには、税金の支払いについても注意しましょう。
解散確定申告と清算確定申告が必要になり、それぞれには期限があります。
関連:会社を廃業する方法とは?廃業の手続きを業界毎にわかりやすく解説!
また、廃業だけが選択肢というわけではありません。
会社を売却することで大切な会社を存続させることができるだけでなく、売却資金を手に入れることもできます。
廃業の前に会社売却という選択肢についても検討してみましょう!